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カモ(野鴨、合鴨)のさばきかた

"カナールソバージュ"canard sobage。野生の鴨。狩猟のシーズンのお楽しみですね。年に一度はいただきたいものです。鉄砲撃ちの知り合いがいるといいことがあります!

関連情報

料理の応用

  • 鴨汁、鴨汁蕎麦
  • 鴨ステーキ

材料について

  • 写真の鴨は野生の鴨を散弾銃で捕獲したもので、首の青いものは真鴨、その他はカルガモだと思われます。真鴨はフランス語で colvert (コルヴェール col=襟、vert=緑)ですが、雌は青首ではありません。象徴してそう呼んだのでしょうか。
  • 野生の鴨と合鴨の大きな違いは食性です。食べるものによって肉質や匂い、大きさにばらつきが出るため、野生の鴨は味が均一ではありません。一方合鴨は餌によって油がのり、クセも少なく食べやすです。
  • 鴨や合鴨、その他の野禽や家禽のおろしかたに大差はありませんが、水鳥は羽の処理がやっかいなのと腿肉が少なく胸肉が大きくなります。雉や鶏は腿が大きいです。うずらや小型の鳥は細かくバラさないなど、それぞれの鳥に合ったおろし方があります。「合鴨のさばきかた」「キジ(雉)のさばきかた」
  • 鳥に限らず野生のもの(ジビエ)はどんな環境にいたか解らないので、衛生面で通常の調理環境と隔離して作業する必要があります。
  • 銃で撃ったものと首をしめたもの、首を切ったものでそれぞれ血の残り方が違います。骨が折れているか、内蔵が破損しているかも味に大きく影響しますので、素材の見極めは大切です。
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鴨のさばきかた
1.湯通し
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2.毛抜き
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6.包丁
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さばきかた

肉をばらさずにおろす方法

おろしかたには、いろいろなやりかたがあります。鶏では一般的な「腿を先に落とす方法」と「胸肉を骨から外す方法」。やり方は鳥や調理によって変えるのがいいと思います。「腿を外して内蔵を後から抜く方法」はこちらでご紹介しました→「合鴨のさばきかた(腿を外して内蔵を後から抜く方法)

大量に処理するときは、下腹を割って内蔵を取り出し(中抜き)から洗いなおしてバラすのが常套手段です。
丸のまま2・3日冷蔵する時間や場所が無い場合は、肉が締まらないために柔らかく扱いにくくレバーが潰れやすいです。そうした理由や、肉をバラバラにせず丁寧に処理したい時などは、このように背から割るのも一つの方法です。調理まで包丁目を少なくしてコンパクトに保存しておきたいときなどにも向いています。

  1. 沸騰させた湯にくぐらせる。漬けすぎると火が入って皮が破れたりするので5秒程の短時間でやる。羽を抜いてみて抜きやすくなっていればOK(水鳥は水を弾きやすいためちゃんと湯につかるようにする)
  2. 丁寧に羽を抜く。皮をやぶらないように注意する
  3. ひと通り抜いたら、もう一度湯にくぐらせ(今回は瞬間)残った毛を取りやすくする(バーナーで炙ってもよい)
  4. 羽根を丁寧に抜いて仕上げる
  5. 頭の付け根あたりからまっすぐ下へ切れ目を入れる
  6. 肩のあたりからあばら骨にそってひらいていき、足の付け根間接の裏にある肉(ソリレス= Sot-l'y-laisse)をほじる。そのまま尾までいく
  7. ぼんじり(尾っぽの肉)の骨も一緒に取ることができる
  8. 胸の縦に板のように入った骨を肉に残してガラを一式外すことができる
  9. 腸が肛門につながる部分を内側から見る。腸にはフンがあるから、それを切ってしまうと肉も周囲も臭くなってやっかい。そのため私は肛門と腸をセットにして外してしまう。あくまでフンにはさわらぬよう。(写真は見やすくするために肛門周囲を外から包丁をさしています。左手の人差し指と中指ではさんでいるのが腸。このままぐるりと肛門をえぐれば腸に肛門がくっついた状態ではずれます。但したくさんやるときは時間がかからないように効率よくやります)
  10. 解りやすくするため切り分けていないだけですが、首から食道〜砂肝〜腸〜肛門と繋がっているパーツ。首の皮〜胸と腿のパーツ。首〜背骨〜ぼんじりの軟骨のパーツが、頭でつながっています。頭を落とします。腸の隣にレバーと心臓があります。
  11. 砂肝は二つに割って、中の食べ物を流し水でよく洗います。レバーはさっと洗う程度に留めて単独でラップなどに包むとよいでしょう
  12. 胸の板のような骨を包丁で取ったら、腕に繋がっている3本の骨を丁寧に取ります
  13. 手羽元、手羽先、もも肉、ぼんじり、一体の状態(もちろんパーツに分けてもかまいません)
  14. 頭と水かき部分は処分しましたが、その他の部分はこちらです。上のボール:背骨、胸の骨、肩の骨。下のボール:砂肝、レバー、心臓

知恵袋

左の写真の一番上。青首と呼ばれる右が雄です。普通雄のほうが肉が多いです。合鴨は太っていて肉の量もたっぷりあるから食べでがあります。野鳥は油が少なめでパサッとした印象がありますが、肉の旨みは大変濃く味わい深いです。

内蔵を破らないようにしたほうがいいですよ。あの匂いは食欲を減退させます。触りたくもないし。それで内蔵を上手に取る方法を考えるようになりました

新鮮な砂肝は食べられると言います。私も食べることもありますがどんな鶏でも食べれると思わないほうがいいです。また野生のものは何を食べてどんな生活をしていたか、全く保証がないのですから生食はやめましょう。

いわゆる”ササミ”は胸肉とくっついています。肩の太い骨と手羽の骨の間接の間に白い筋が通っているので普通は包丁で切ってしまいますが、骨を上手に外すと切れません。

この写真の鴨は撃った鳥ですが、血の固まりもなく内蔵も損傷していませんでした。上手に狙ったんでしょうね。

野生の鴨などは血の味を楽しむ料理もあり、その場合は銃ではなく網で捕まえることになります。狩猟後熟成が向く鳥の代表にキジがあります(フランスで熟成を"フザンダージュ"と言う)。キジは食べやすい代わりにパサッとして個性が薄いのですが、このフザンダージュによって味がよくなると言います。1ヶ月という話ですが扱いに慣れてからがいいと思います。

    • 2010年11月16日 料理…村越洋一、取材…よーくん、やっこ(いえあじプロジェクト)
    • 2018年1月10日 村シェフ校正
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